令和5年度司法試験予備試験合格再現答案(公法系)

お久しぶりです、へるしろです。

 口述試験対策の関係で更新が滞っていましたが、本日公法系の予備試験再現答案をアップします。実務基礎と選択科目(労働法)は再現答案を作ることはできませんでした。よってこれで再現答案のアップは最後となります。

 また、受験後の感想を記した記事のリンクを貼っておきますので興味のある方はぜひご覧ください

司法試験予備試験論文式を受験して(公法系) - healthy-law’s blog

 

憲法 評価:A

 

第1

  •  Xの主張する憲法上の権利として、取材源を秘匿する自由が想定される。この権利は憲法上の権利と言えるか。

 まず、憲法は国民に知る権利を保障していると解されるところ、報道の自由は国民の知る権利に奉仕するから「表現の自由」(憲法21条)として保障される。そして、取材の自由は報道の自由に資するものとして憲法上保障されると解されるところ、取材源の秘匿ができないと取材は著しく阻害されるから上記自由は憲法上の権利である。

 これに対する反論として、取材の自由は報道の自由の精神に照らして、十分尊重に値するとは言えるが、憲法上の権利としてまでは保障されないとの主張が考えられる。

 私見としては、報道が正しい内容を持つためには取材の自由は不可欠であるから、報道の自由が保障される以上取材の自由も憲法上保障されるため、Xの上記権利は憲法上保障されると考える。

  •  そして、法廷においてインタビューに応じた者の氏名を答えさせられることは、取材源を秘匿する自由を著しく害するものであるから、インタビューに応じた者の氏名が「職業の秘密」(民事訴訟法197条1項3号)に当たらず証言拒絶が認められない場合、Xの憲法上の権利が制約されることとなる。
  •  では、上記制約はいかなる基準により正当化されるか。

 この点につきXは、それが開示されると以後その職業の遂行が困難となるものは「職業の秘密」に当たると主張する。このように解することが職業選択の自由憲法22条)にも資すると言えるし、報道の自由を最大限保障することにつながる。

 本件ではインタビューに応じた者を秘匿できないと今後Xによる取材を受けることをためらう者が出てくることが予測され、記者クラブに所属できず取材方法に限りがあるXにとっては取材の自由が著しく阻害されるから、以後Xのジャーナリストとしての活動が困難になるものと言えるから、「職業の秘密」として証言拒絶できる。

 反論としては、取材の事由が憲法上重要な権利ということができるとしても甲の裁判を受ける権利(憲法32条)という憲法上の権利と衝突する以上、合理的な調整が必要である、そこで証拠としての必要性と、証言拒絶が認められないことで取材の自由が妨げられる程度、報道の自由への影響を比較し、後者が優越する場合に限り証言拒絶は認められると言うべきであるとの主張が考えられる。そして、本件ではインタビューに応じた者が誰であるかは乙に対する守秘義務違反に基づく損害賠償請求が認められるかどうかの争点の中心であり、証拠としての必要性は極めて高いと言える。他方で証言拒絶が認められなかった場合に生じる取材対象の萎縮効果は抽象的な恐れにすぎないから取材の自由が妨げられる程度は小さく報道の自由に与える影響も少ない。よってXによる証言拒絶は認められない。

 以上の議論を踏まえ、以下私見を述べる。

 まず、取材の自由は憲法上、精神的自由権をとして特に重要なものである。一方で裁判を受ける権利も重要な権利であるが、本件は民事裁判であるから刑事裁判とは異なり厳格な真実発見は要請されない。そこで、ある事項が開示されると以後その職業の遂行が困難となるものは「職業の秘密」に当たるが、そのうち保護に値するもののみが証言拒絶が可能と解する。そして、保護に値するかどうかは取材を行う必要性、取材行為の態様、取材事項の社会の関心、取材の自由が妨げられる程度を総合的に考慮する。

 本件では、記者クラブに所属資格がないXにとって乙に対して直接の取材を行う必要性が高かった。また、Xによる取材の態様は乙に守秘義務違反をさせるもので悪質性が高いとも思えるが、単に説得をしたにとどまり、悪質性は高くない。また、甲はSDGsのもとに名を馳せる企業であるから、輸入元に関する社会の関心は高い。一方で、証言拒絶が認められないと、Xは記者クラブへの入会ができず、効果的な取材方法は個人への直接的な取材しかないこと、Xがインフルエンサーとして知名度が高いことからXの取材をうけるものは身元を明かしたくないと考えるものが多いであろうことから、証言拒絶が認められないとXの取材の事由が妨げられる程度は重大である。

 よって本件は「職業の秘密」のうち保護に値するものと言えるから、証言拒絶は認められる。

(約3ページ半)

 

行政法 評価:C

第1 設問1(1)

 不適切な行政行為からの国民の救済という行政事件訴訟の趣旨及び基準の明確性から、「法律上の利益を有する者」とは法律上保護された利益が侵害され、または必然的に侵害される恐れのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が不特定多数人の具体的利益を一般公益に吸収させるにとどめず、当該利益の帰属する個人の個別的利益としてもこれを保護しようとする趣旨を含むと解される時はそのような利益も「法律上の利益」に当たると解する。

  •  本件においてCの主張する利益として、過当競争により経営危機にさらされない利益が想定される。

 そして、「基本的事項」(法6条2項4号)として、B、C社の2社に限って許可を与える旨が記載されていること、法施行規則第2条の2第2項ロにおいて業者が「経理的基礎」を有することが許可条件とされていることからすれば、法は浄水槽汚泥の処理業務が住民の健康や環境にとって重要であることに鑑み廃棄物処理業者の経済的基礎を保障しようとしているものと解され、業者が過当競争により経営危機にさらされない利益は法律上保護された利益と言える。また、このような利益は一般公益に吸収解消することは困難で、業者の個別的利益であると言える。

 そして、Cはすでに許可を受けた業者の一つであるところ、新たにDに許可がなされると、浄化槽及び汚泥の量の増加が見込まれない以上競争に巻き込まれることが予想されるから上記利益が必然的に侵害されるおそれがあると言える。

 したがって、Cは「法律上の利益を有する者」にあたり、原告適格が認められる。

第2 設問1(2)

  •  取消訴訟につき、訴えの利益とは処分の取消しにより回復すべき法律上の利益が存在することを言うところ(行政事件訴訟法9条1項)、本件許可はすでに失効していることから本件取消訴訟にもはや訴えの利益は認められないとも思える。いかに解すべきか。
  •  この点、ある処分が失効してもその効力が後行処分に引き継がれていると言える場合はなお先行する処分の効力は残存すると言えるから、そのような場合はなお回復すべき法律上の利益が認められ、訴えの利益は存在すると考える。
  •  本件では、本件許可はすでに失効しているものの、本件許可の更新が行われており、許可の更新は許可処分の存在を前提としていると言える。したがって許可の更新に本件許可処分の効力が引き継がれていると言えるから、なお本件許可の効力は残存しているから回復すべき法律上の利益が認められる。よって訴えの利益は認められる。

第3 設問2

  •  まず、A市が主張するようにA市に裁量権が認められるかどうか検討する。

 この点、法7条5項本文に「認めるとき」と言う文言が用いられていることや、同項各号の要件はその充足性を判断するのにせ行政庁による専門技術的知識を要すると考えられることから、同項2号、3号の各要件の認定についてはA市に要件裁量が認められる。

 したがって本件許可が違法となるには「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった」(行政事件訴訟法30条)と言える必要があるから、Cはこの点を主張すると考えられる。そして、判断の内容及び過程が重大な事実の基礎を欠くか、社会通念上著しく妥当性を欠く結果著しく不当な処分がなされた場合に限り裁量の逸脱、濫用となり違法になると解する。

 本件では、本件許可は新計画に基づいてなされているところ、新計画は将来における人口及び総世帯数の見込みは旧計画を引き継いでいるにもかかわらず、浄化槽汚泥について根拠の乏しい大幅な増加見込みがなされており、これを前提にB、C以外に新たな許可をしない旨の記載を削除されているから、新計画は不当なものである。そして、本件許可が新計画に基づいている以上、本件許可は考慮すべきでないことを考慮した結果、著しく妥当性を欠くものとなっていると言える。そして、これはD社が実質的にB社の一部である本件においても、将来的にD社が別個独立して事業を行う可能性もある以上ことならない。

 したがって本件許可は裁量権の逸脱、濫用があったといえ、行政事件訴訟法30条により違法となる。

(約3ページ半)

 

 公法系、特に憲法に関しては再現が難しく完璧な再現はできていないと思います。しかし記述内容の骨子は本番の物と一致していますのでぜひ参考にしてください